翻訳ができれば通訳もできるは「大間違い」なのでしょうか?
「通訳」と「翻訳」は、共に一つの言語を異なる言語に置き換える作業ですので、翻訳ができれば通訳もできるだろう(逆もまた然り)、と世間では思われがちです。
しかし、実は、その性質は作業的に大きく異なるのです。
ます、一つ目の相違点は、表現形式の相違です。
当たり前のことですが、「通訳」は声を通じて言語を訳すのに対し、「翻訳」は文字によって言語を訳します。
つまり、翻訳者は文章での表現力ですが、通訳者は音声での表現力が必要となってくるのです。
二つ目は、制限時間の相違です。
「翻訳」にも基本的に締切はありますが、原文をもらってから辞書を引いたり、表現を吟味したりして、じっくり考えながら訳すことができます。
これに対して「通訳」は、聞いた事柄を瞬時に正確な日本語に直さなくてはなりません。
知らない単語があるからちょっと待って、などとはいかないのです。
最後に、訳し方の相違が挙げられます。
通訳には、翻訳とは異なる技術がいります。
特に同時通訳の場合はそれが顕著になることが多いのです。
簡単な例文で示してみましょう。
WLast year、I stayed in the US to attend an exchange program thru Colombia University for a year.Wこれを簡単に翻訳する場合は、「昨年、1年間のコロンビア大学交換留学プログラムに参加するため、アメリカで暮らしました」というふうになりますが、同時通訳の場合は、最後まで待っていてはとても間に合いませんので、聴き取ったそばからどんどん訳していくため、次のようになります。
「昨年のことですが/私はアメリカに滞在していました。
/コロンビア大学の交換留学プログラムに参加するためで/期間は1年間でした」つまり、訳すための「テクニック」に大きな相違があるといえるでしょう。
これらのことを考えても、翻訳者と通訳者では、身につけなくてはいけないスキルが大きく違ってくることがいえます。
目指す場合は、自分はどちらになりたいのか、またどちらが向いているのかを冷静に判断しなくてはならないでしょう。
翻訳を通訳と比較して説明すると、原則として通訳より翻訳の方が文書をゆっくりと読み、その課題についてよく調べながら、語彙などを用意し、必要によって原文の著者または直接依頼主と相談し疑問のある箇所について説明してもらうなど時間的に余裕があるといえます。
このようなことは大至急の注文の場合でも不可能ではありません。
通訳は、翻訳と違い、通訳は時間に余裕がありません。
翻訳はほとんどの場合、編集完了・権限付与済みの文書を対象に行われます(あいにく編集中の文書が訳され、訳される途中で編集されるなどのこともなくはないのが現状です。
このような状況は翻訳者にとって非常に困難ですが、理論上では不可能なことではないし、実践上でも起こりえなくはありません)。
又、完璧に依頼主の注文に用意してきた通訳でも、全く意外な状況に遭うことがあります。
偶然として入ったレストランの変わったメニューをその場で訳されることはその例の一つであります。
通訳としての中心活動と思われる場面と可能でありながら通訳本業から離れた場面との区別は容易ではないからです。
しかし、だからといって翻訳の方がやりやすいとは一概には言えません。
時間や文脈に関わる情報不足により完璧な翻訳文ができない、事前翻訳・最終翻訳の期間が非常に短くなってしまうなどのことがあります。
翻訳者は連続的に翻訳完了時簡短縮へのプレッシャーにさらされているため、依頼主に大至急の翻訳と完成度の高い翻訳との質の違いを論じられない場合がほとんどです。
通訳を翻訳と比較して説明しましょう。
通訳には、会議通訳と呼ばれる通訳は同時通訳と逐次通訳に分けられます。
同時通訳の場合の訳文は原文と同時に生成されています(遅延は数秒に過ぎない状態です)。
逐次通訳では、訳文の一部は原文の一部が逐次生成された後に生成されます。
逐次通訳の通訳は同時通訳より原文に一番ふさわしいと思われる訳文のバージョンの生成時間が与えられます。
依頼主から見て通訳は随時同時通訳を行えるのが理想に近い状態と思われますが、実際は同時通訳と逐次通訳の選択は依頼主の好みだけでなく通訳場面にもよるということがいえます。
前者はよくビジネスパートナーの直接通話の際に行われる一方、交渉や挨拶のスピーチの場合は、コミュニケーション参加者同士の発言内容は次々と訳される逐次通訳の方が効果的と思われます。
このような選択パターンは自然と思われるどころか、逐次通訳より同時通訳の方が効果があるなど言い切れないのが現状です。
ところで、逐次通訳と違い、同時通訳の方が通訳の負担が大きく、集中力が求められるため、頻度の高い又は長時間の休憩は避けられません(必要に応じ、二人の同時通訳が交代で通訳を行うのが望ましい)が、反面、同時通訳も逐次通訳も直訳とは違う。
通訳のパフォーマンスの質は訳文により原文の内容をどのぐらい表現できるかによって評価されます。